08/07/2026
2026年フランス料理留学上級コース@FERRANDIレポート
その15
7月8日
今日迎える講師は、2011年にMOFを獲得したシャンパーニュ地方の首邑ランスにあるレストラン「Arbane(アルバンヌ)」のオーナーシェフPhilippe Mille(フィリップ・ミル)氏、当プログラムの常連講師の一人です。
生まれ故郷はシャンパーニュ地方ではなく、ブルターニュ地方に入る手前、大聖堂で有名なシャルトルの西70kmにある、自動車の24時間耐久レースで有名なルマンです。
キャリアは、店舗売りの菓子を作るパティシエとしてスタートしますが、「毎日同じ菓子を作ることに退屈して」料理人に転向、当時の巨匠であるジャン・ボルディエシェフの店を皮切りに、パリではドゥルーアン、プレ カタラン、ラ セール、リッツ、スクリブ、ムーリスといった超一流どころを経てランスに移り、レクレイエールの15年間で星を二つ獲得、2年前に独立してアルバンヌのオーナーシェフとなり、今年二つ星を獲得、LA LISTEでは「地域の優良店」にランクされています。
テーマに「シャンパーニュの大地とシャンパーニュ」を掲げた今日の料理は、以下の四品です。
アントレ)
Veau taille au couteau juste tiédi
軽く温めた手切りの仔牛
仔牛だけでなく、ムール貝、海苔など海産物が入ります。細かく刻んだ仔牛独特の優しい香りと柔らかな歯応えに、微妙なヨードの風味がからんで、全体を鮮やかな酸味が締めくくる「terre(大地)」だけでなく「mer(海)」も取り入れた、実はスケールの大きな一皿でした。
料理の名前に一言も海の要素を含めていないことについて、シェフは、「terre et merのコンセプトを実際の皿に即してサービスに語らせたいから。サービスと顧客のコミュニケーションまで計算することは、近年特にサービス要素が重要になって来ているグランメゾンでは必須の配慮だと考えている。料理名ですべてを語らない理由は、そこにある、」と述べています。ちなみにアルバンヌは、30席に対して、料理人15名、サービス14名の体制で運営されています。
ポワソン)
Homard en robe des feuilles du vigne rôti, puis fume sur sarments, fleurs de courgette et raisins, sucs de homard perlées de tagette
葡萄の葉をまとわせてローストしたオマール海老、葡萄の枝で燻し、ズッキーニの花と葡萄を添えて、オマールのジュをタジェットの香りとともに
この皿では、海が主役を担い、葡萄とズッキーニに代表させた陸が脇役にまわりました。圧倒的なオマールの旨味がすべてを支配する中、左下に置かれた葡萄の茎や枝などの木質部分から抽出するヴァン ド ラッフルから作ったコンディマンがピリッとアクセントを効かせていました。
今日はすべて厨房で用意して皿盛りで供されましたが、アルバンヌのホールでは、シャンパーニュの小樽の中で葡萄の枝を白熱させて燻し、オマールの殻も客前で外す演出で供するのだそうです。
ヴィアンド)
Carré d’agneau rôti, sabayon cardamome et curry vert, millefeuille de carottes, raviole de chou pointu blanc
ローストした仔羊の背肉、
カルダモンとグリーンカレーのサバイヨン、人参のミルフィーユ、白い尖りキャベツのラビオリ
何ともエレガントな皿上の景色であり、味わいでありました。
かすかな苦味、酸味、カレー風味に誘われて、きれいに均一に火が入った仔羊の、甘味さえ感じさせる若々しい弾力を楽しみながら食べ進めると、ラビオリに織り込まれた生姜がビリリと味を引き締めて、パンチの効いた爽やかな食後感を創り出すのです。感心するのは、ガルニチュールの繊細な形は、その形でなければ出せない味わいから計算されて造形されているのであって、単に姿形が「映える」からなどという箸にも棒にも掛からない浅はかな理由からではない、という点です。
デセール)
La noisette Cazette, cremeau de noisette et sorbets au praliné de Cazette
カゼットのノワゼット、ヘーゼルナッツのクリームカゼットのプラリネを使ったソルベ
カゼットは、シェフお気に入りの材料です。プルターニュー産ヘーゼルナッツを独特な方法で焙煎した、商標登録済の商品名です。このデセールは、まさにそのカゼット尽くしで、滑らかなクリームからクロッカンな食感にいたるまで、さまざまなバリエーションが楽しめました。
今日は用意がありませんでしたが、これには甘口で濃厚なリキュールのラタフィアが良く合うとのことでした。
帰りのTGVに遅れないようにするため、あまり時間はとれませんでしたが、以下の質疑応答がありました。
Q オーナーとして、料理とサービスの間のコミュニケーションは、実際にはどのようにしていますか?
→二つの異なるチームではなく、一つのチームと考えている。具体的には、メートルさんと料理人は、新たなルセットを提供するに際して、必ず両者に評価させ、カルトの内容を変えたタイミングで、互いに一週間くらい、それぞれの現場を観察できるようにしている。
Q 日本食材で、味噌の他にも使うものがあるか。
→柚子、柚子クリーム、キウリ、海藻なども使う。シャンパーニュの全7セパージュに合うツマミの一つとして出している。
Q グランメゾンとして重視していることは、料理とサービス以外にあるか?
→レストランの第三要素は、アンビエンス。従い、インテリアも重視。また、当然ながらチームワークが大切なので、10年以上一緒に仕事している人が多い。
Q MOFやボキューズ ドールなど、シェフは数多くの資格やコンクールに参加されている。そのモチベーションは、どこから来るのか?
→さらに向上したい一心からだ。